2009年10月30日金曜日

給油(/点検)

給油(/点検)

 
 

 受注を形にする場面です。
給油も点検も、お客さまの所有物に触れます。
お客さまがスタッフの心を態度、行動で知ることになります。
カバーの開け閉め、キャップの開け閉め、タンクに接触するノズルの音など、その
小さな、しかも毎日何度も繰り返す作業です。

 しかし、人によっては半年に一度の経験というのも少なくありません。
もし不快感をもてば不快感は半年続きます。
気持ちよければ気持ちよさは半年続きます。

こうしてお客さんが増えたり、減ったりします。
店にしたら増えた、減ったの話でも、お客さまにしたら、人ぞれぞれに別の感じ方
があります。

 昔、富士山麓で暮らす一組のご夫婦がいらしゃいました。
奥さんは武田百合子さんといい随筆家です。
ご主人は武田 泰淳(たけだ たいじゅん)。代表作に「森と湖のまつり」という小
説があります。
「日本文学全集」には必ず収録され、映画化もされた有名な作品です。
いまのようにビデオやDVDのある時代ではありません。
夫婦で町に出かけて映画を見るのが唯一の楽しみだったそうです。
そのたびに行きつけのサービスステーションで給油していたそうです。

 そのサービスステーションでは、毎回ドリンクの無料プレゼントがあったそうで
す。しかし、ご主人が亡くなり、そんな楽しみもなくなりました。
 
 ある日、車を掃除していたら、車から空き瓶がゴロゴロ出て来たそうです。
楽しかった日々を思い出し、いつものサービスステーションへ給油に車を走らせま
した。あの時と同じようにドリンクサービスを受けたそうです。

 その時の奥さんの気持ちはどうだったでしょう?
 想像してみてください。
奥さんはその車、雪ですっかり痛んだニッサンのブルーバードですが、ずっと手放
さず乗り続けたそうです。
手放さなかった奥さんの気持ちを想像してみてください。

知っていようが、知っていまいが、私たちは、お客さま、ひとりひとりの生き方や
思い出と向かい合っているのです。

給油をはじめ、車に触れる時、
私たちはいつも自分の想像力を試されています。


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